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地域科学の実践

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2022年6月14日

「空き地」が城下町の景観を救う!?コミュニケーションを生む空き地活用のススメ(大分県竹田市)

1.城下町に増加する空き地の実態と負の連鎖

「空き地」と聞いて、どんなイメージをお持ちだろうか?草がボーボーと生えてる?立ち入り禁止という札がある?なんとなく駐車場になっている?身近にある空き地はどんな雰囲気を呈しているだろうか。

 

2020年、株式会社地域科学研究所では、「空き地」をテーマとしたプロジェクトが進んでいた。今回は、中心市街地に虫食いのように存在する「空き地」が町にとってどんな可能性をもたらすか、プロジェクトを通して見えてきたことをまとめてみた。

 

舞台は大分県竹田市。人口が約2万人。65歳以上が人口に占める高齢化率は47.8%と、大分県内でも高齢化の進む地域である。(出典元:大分県内の高齢者の状況(高齢者数・高齢化率))南部・西部は熊本県、宮崎県との県境にあり、農林業が主体の山深い地域や高原が占めるが、市内中心部にはかつて難攻不落の城といわれた岡城址と、その城下町が竹田市の中心市街地を形成している。歴史・文化の融合したコンパクトな町である。

今回のプロジェクトの「空き地」は、この城下町の中にある。

碁盤目のように整備された区画に、商店や民家が立ち並ぶ。この城下町の中で「空き地」はゆっくりと時間をかけ、気がつくとそこかしこに発生してしまった。中心市街地における空き地の増加で懸念されるのは、景観の悪化である。

 

さらに住民の高齢化によって対策が見えず、今後も空き地は増え続けるだろうという負の連鎖だった。そして今回のプロジェクトが始まったのだ。

そもそも、この城下町にいったいどれくらい空き地があるのだろうか。そこで、空き地の実態を調査することにした。

2.城下町の空き地の実態を知る!~地図とワークショップで空き地の見える化~

2020年9月、「竹田マッピングクリエイティブパーティ」と題し、空き地探しから始めることに。その際に、写真と位置情報で空き地を見える化できる弊社で開発したアプリを使った。そして、大分大学柴田研究室の協力を得て、先生と学生と2日間のワークショップを実施。

 

 

さらに竹田市所有の土地や建物と民間の土地・建物を地図に落とし見える化した。そこに空き地をマッピングし、城下町をさらに細かいエリアごとの役割の整理していく。アイデアや意見を出し合い、いろいろなバランスをみてエリアビジョンを作成。さらに、その中で活用できそうな空き地はどこか、おもしろくなりそうな空き地はどこかと地図と向き合いながら考えていく。

 

「可能性マップ」として、ワークショップで出た意見をデジタル化

完成したデジタルマップはこちら→アーバンデータマップ

3.やってみよう!「竹田市空き地戦略本部」の誕生

そんな中で、「空き地を使ってみないと、効果がわからない。」と誰かがつぶやいた。なるほど、その通りだということになり、実際に空き地をひとつ、借りることとなった。

THE「空き地」である。何もない。ドラえもんの土管もない。そんな場所で何をするか?何ができるか?まず、テントを張って、基地をつくってみた。そのテント活動から始まったものが、今後の空き地活用プロジェクトを担う「竹田市空き地戦略本部」である。

4.「空き地」レシピの作成~活用のアイデアを出そう~

まずは「空き地」を「空き地」として活用するため、できることをレシピ化することにした。そのレシピもすべて実践しながら、つくっていく。

具体的に挑戦したものは、「みんなでベンチづくり」「空き地deモバイルサウナ」「空き地ポップアップコーヒー」「竹ドームづくり」など、どれも「空き地」でできるものばかり。竹田市のまちづくり会社や地域おこし協力隊も協力してくれた。

 

極めつけは、「空き地deこたつの大学講義室」。柴田先生が毎週空き地からオンライン授業を配信。テントの中にこたつをしつらえる。即席の講義室である。新型コロナの影響で先生はどこからでも授業ができるようになったことは、不幸中の幸いである。

 

町の人、かかわってくれる外部の人、地域の素材、その土地にしかないものたちがかかわりあってオリジナルの空き地活用レシピが生まれる。

アーバンデータチャレンジ2020銀賞でした!

空き地は「まるみえ」である。何かやっていると、誰かが立ち寄ってくる。かかわりが生まれる。高校生から空き地戦略本部にお手紙が届く。スマホの時代に手紙が届くなど、やはりドラえもんの時代にタイムスリップしたようだ。一通の手紙がきっかけとなり、4月以降は高校生とガーデンプロジェクトが開始予定だ。

 

空き地はさまざまな可能性を秘めている。今後も大分大学と連携し、城下町の次なる課題、浄化槽設置と河川環境の向上にも取り組んでいく予定だ。

皆さんの周りにもないだろうか?地域のかかわりあいを生む、未知なる可能性をたっぷりと秘めている、「空き地」が。

 

~おまけ~

空き地活用戦略本部のホームページでは、城下町の空き地の場所を地図と連携して見える化しています。その取組をアーバンデータチャレンジ2020にエントリーして、銀賞を受賞しました!